大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(う)167号 判決

被告人 鈴木明夫

〔抄 録〕

所論は要するに原判示第二の(一)の小切手用紙一枚の窃取と、同第二の(二)の有価証券偽造、同行使、詐欺の所為は順次手段結果の関係に立ち刑法第五十四条第一項後段の牽連犯の規定を適用すべきであるところ、原判決は法令の適用を誤り、原判示第二の(一)小切手用紙一枚の窃取と同第二の(二)有価証券偽造、同行使、詐欺(右三者は牽連犯とす)の所為を以て刑法第四十五条前段の関係にあるものとし併合罪の規定を適用したので破棄を免れずと主張するけれども他人に属する小切手用紙一枚(所論小切手用紙一枚が経済的価値を有し、刑法上窃盗罪の目的物となり得ることは多言を要しない。)を窃取し、これに被害者の印を盗捺の上被害者名義の小切手を偽造した場合において、小切手用紙の窃取は有価証券(小切手)の偽造の普通の手段に非ざると共に有価証券の偽造は窃取当然の結果ではないので右窃取の行為は有価証券偽造に対し独立の一罪を構成するものと言わねばならない。然らば原判決が取判示第二の(一)の罪と第二の(二)の罪との間に牽連犯の関係を認めずこれを併合罪の関係に在りと判断したことは相当であつて所論の如く法令の解釈適用を誤つたものではない。論旨は理由がない。

(三宅 東 井波)

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